第26章 延期できない裁判の開廷時間

夜七時。レストラン。

「中尾さん、しばらくお見かけしませんでしたが……ますます雰囲気が良くなられましたね。お綺麗だ」

「松井社長こそ、お上手ですね」

中尾美希は向かいの、眼鏡をかけた中年男に当たり障りのない笑みを返した。

――気分が悪い。

仕事ぶりや手腕じゃなく、いきなり“雰囲気”を褒める?

中尾美希がいちばん分かっている。

その“雰囲気”とやらは、長谷川栞を一から十まで真似して作ったものだ。

「松井社長。長谷川グループとはお取引が多いと伺いました。でしたら……あちらの招待状、余っていらっしゃるんじゃありませんか?」

松井社長の視線が露骨で、胸の奥がむっと熱くなる。

けれ...

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